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書き溜めておいた技術記事や旅行記のバックアップです。

フェイクニュースの特徴 - 嘘を拡散して、人々に信じさせる方法

先日の米国大統領選挙においてドナルド・トランプ候補の勝利に貢献したのは、意図的に嘘を流すインターネットニュースサイトの存在が大きいとされている。フェイクニュースサイトは民主党のヒラリー・クリントンを筆頭に、敵対候補の信用を毀損する内容のデマ記事を大量に投稿し、それが無知な人々がフェイスブックなどのSNSで拡散することで、選挙結果に影響したとされている。

インターネットニュースの影響力の大きさは、トランプ支持の姿勢を見せる極右系ニュースサイト、「ブライトバートニュース」の運営者であるスティーブン・バノンを首席戦略官と上級顧問に任命したことでも伺える。ちなみにブライトバートニュースはフェイクニュースとまではいかないものの、人種差別的、性差別的なスタンスで悪名高いサイトと知られている。

まずサイト名からしても悪質である。これはかつて存在したcnn-trending.com(現在は閉鎖)というフェイクニュースサイトのスクリーンショットである。アメリカの大手テレビ会社であるCNNのロゴを使用し、一見するとCNNの配信したニュースサイトに見える。他にもwashingtonpost.com.coやBloomberg.maなど注意しないと大手メディアと誤認してしまうようなサイト名になっていることが多い。

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フェイクニュースの作り方は非常に巧妙だ。その内容は嘘と真実を巧みに織り交ぜ、虚偽の内容を人々に信じさせてしまうような仕組みになっている。

フェイクニュースの悪質性とその情報操作の巧みさを示すために、denverguardian.comというフェイクニュースサイトの記事を実際に見てみよう。その前に、大統領選挙中に問題になったヒラリー・クリントンの私用メール問題を取り上げようと思う。

私用メール問題とは、ヒラリー・クリントンがオバマ政権下で国務長官を務めていた時に、国家機密を含む内容を私用のメールアドレスやメールサーバーでやり取りしていた問題である。これ自体は真実であり、厳密な捜査の上でFBIも事実を認定した。

これに対してフェイクニュースサイトは、この話題な様々な尾ひれを付けて事実の捏造を試みた。例えば、denvergurdian.comと大手メディアのガーディアンの地方支局に誤解される可能性がありそうなこのサイトは、以下のような内容のデマを流した。

ヒラリーEメールの流出で疑惑のFBIエージェントが妻を殺害後、自殺

ウォーカービル(MD) - 米国務長官であるヒラリークリントンの個人的な電子メールサーバーへの最新の電子メールの漏洩を担当していると信じられているFBI代理人が、土曜日の朝早く明らかな殺人と自殺で死亡したと 警察。 FBIの捜査官マイケル・ブラウン(45歳)は、金曜日の夜遅く、夫婦の家に火をつけて銃を自分自身に向ける前に、33歳の妻のスーザン・ブラウンを射殺したと信じている。 ブラウンは、ワシントンD.C.メトロポリタン警察の12年のベテランで、FBIで過去6年間を過ごしました。 隣人は茶色の住居から煙が出ているのを見て、午後11時50分頃に9-1-1に電話をかけた。火災の乗組員が後で現場に到着するまでに、家全体が炎に包まれた。 “夫人。 ブラウン氏の死は、家の火事に先立つ銃撃事件で起きた」とウォーバーヴィル警察署のパット・フレデリック長官は述べた

殺害の背後にある動機はまだ調査中だが、警察はブラウン氏がFBIと非常に尊敬されているエージェントであり、コミュニティで非常に好意的に見られていると言う。 ブラウンの家族を知っていたFBI関係者は、「あなたの妻、あなたの愛する人とこのレベルの怒りと暴力に導くものは何か」と語った。 陰謀論は、多くのオルタナ右翼の中で横行している。 これは大統領選挙に近いFBIの電子メールリークの報復で、クリントン氏が別の「ヒットジョブ」と信じていた。 アレックス・ジョーンズのインフォアーズやWNDのようなメディア・アウトレットは、クリントン氏のために働くグローバル主義者の暗殺者が殺害された茶色の家庭を持っていて、彼らの家が何らかの可能性のある証拠を破壊するために焼かれたという仮説で動いている。 FBIのジェームズ・コメイ監督は、現時点ではコメントを拒否したが、同局は「2人の親しい友人」を失うという状況になるので、プライバシーと祈りを求めた。

これは発展途上の話です。

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この文章の悪質な点はヒラリーの私用メール問題という真実に対して、ありえそうな、しかし事実無根な嘘を追加する。

つまり、事実をベースにオリジナルの偽情報を追加することによって、嘘がいかにも真実であるように見せかけている点である。そして実在しない架空の自殺したFBIの捜査官の年齢や家族構成、地名、近所の人の証言などの細かい設定によって、いかにも現実のニュースであるように見えるように計算されているのである。そして、オルタナ右翼の噂などの信憑性皆無の情報がさりげなく添えられており、あたかも、ヒラリーが証拠隠滅のためにFBI捜査官を暗殺したかのような印象を与える内容になっている。

多くのフェイクニュースサイトはこれに似た構成になっている。些細な事実をもとに、創作や作り話、噂話やデマを混ぜ込んで、主語の大きな話題に作り変え、社会を混乱させる嘘情報を拡散させる。

それでは実際にフェイクニュースを編集し、投稿するニュースサイトの背後にはどのような勢力が存在するのだろうか?

米国の例を挙げる。

まず最初に広告収入を目的としたグループである。ウェブサイトの運営者はPV数(あるウェブサイトがどの程度閲覧されたか)に応じて、Googleなどの広告配信企業から、広告収入を受け取ることができる。そして、モラルの低い運営者は、いかにも人々の興味を惹くようなセンセーショナルなタイトルの記事を投稿し、拡散を狙うのである。

実際にあるフェイクニュースサイトはマケドニアの田舎町に住む若者達によって、広告収入を目的に運営されていた。 このニュースサイトは、失業率が高く、平均年収が日本円にして50万円ほどのこの街に、一種のゴールドラッシュとでも呼ぶべきような現象を引き起こしていたという。

第二に、オルタナ右翼と呼ばれるドナルド・トランプを熱烈に支持する過激な勢力の存在がある。反エリート・人種差別的・女性差別的な思想で悪名高いオルタナ右翼にとって女性のエリートであるヒラリーは嫌悪の対象だ。そのヒラリーを追い落とすために、フェイクニュースを拡散するのはありうる話である。

第三に最も恐ろしいことであるが、敵対国のスパイによる情報工作があるとされている。これは英国の大手メディアのインデペンデントからの引用である。

ロシア政府が1000人以上を動員し、反ヒラリーのニュースを合衆国を混乱させる目的で作成する。米選挙でロシアの干渉を主張している委員会の民主党代表が語る。

www.independent.co.uk

なるほど、敵対国を混乱させる目的で、インターネット上で嘘の情報を流す情報工作を行なっているというのはありえそうなストーリーだ。インターネットを使った嘘情報の拡散は、実行する側からすれば、非常に容易でリスクも少なく、一方で被害者側からすれば、訂正を行うコストも高い。

インターネット上にばら撒かれる嘘情報・フェイクニュースによって社会が混乱し、民主主義の根幹が揺らいでいる。我々はこの危機に対してどのような態度で臨むべきなのだろうか?「嘘を嘘と見抜く方法」をどのように身につけるべきなのだろうか?