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UTALI

書き溜めておいた技術記事や旅行記のバックアップです。

キュレーションメディアの何が問題なのか? | パクリとまとめの境界線は?

DeNAのインチキ医療サイトのWelqが問題になり大炎上したことをきっかけにキュレーションメディアの著作権問題が問題になっています。

特に問題視されているのは、「NAVERまとめ」を筆頭とした、いわゆる「まとめ」サイトです。そこで今回はまとめサイトが抱えている問題点を、主にキュレーション・まとめという言葉の定義を明らかにする過程を通じてはっきりとさせたいと思っています。

キュレーション・まとめサイトの悪質性は?

  • パクリコンテンツで広告収入を得ている
  • 元記事にアクセスしなくても内容が分かってしまう
  • クリエイターから利益を奪っている
  • クリエイターの努力を蔑ろにしている

キュレーション・まとめという言葉の意味を考える

そもそも、キュレーション・まとめという言葉はどういう意味なのでしょうか?

ここで日本の著作権法の運用上、どのように引用が扱われているかを、判例に基づいて判断してみたいと思います。

そこで例にあげるのが、「パロディー・モンタージュ写真事件」と「藤田嗣治絵画複製事件」です。

パロディー・モンタージュ写真事件

まずは「パロディー・モンタージュ写真」事件の概要について説明します。

http://www.jps.gr.jp/wp-content/uploads/2014/08/workshop1.pdf

「パロディー・モンタージュ写真」事件(合成写真裁判) (最高裁・昭和55年3月28日判決)では、「原著作物の特徴 を表す主要な部分が直接わかってしまう形での利用は、著作者人格権(同一性保持権)を侵害する」として東京高裁に審議のやり直しを命じた

d.hatena.ne.jp

法三〇条一項第二は、すでに発行された他人の著作物を正当の範囲内において自由に自己の著作物中に節録引用することを容認しているが、ここにいう引用とは、紹介、参照、論評その他の目的で自己の著作物中に他人の著作物の原則として一部を採録することをいうと解するのが相当であるから、右引用にあたるというためには、引用を含む著作物の表現形式上、引用して利用する側の著作物と、引用されて利用される側の著作物とを明瞭に区別して認識することができ、かつ、右両著作物の間に前者が主、後者が従の関係があると認められる場合でなければならないというべき

引用とは、紹介、参照、論評その他の目的で自己の著作物中に他人の著作物の原則として一部を採録することをいうと解するのが相当

前者が主、後者が従の関係があると認められる場合でなければならないというべき

つまり、引用は自分の作品を作る上で、他の人が作った物であることがわかるようにしなければいけないし、その内容は作品のほんの一部でなければいけないよ。ということです。

これをまとめサイトのコンテンツに当てはめてみるとよくわかりますね。まとめサイトの大半は引用された文章と写真だけでページが作られています。そこには主がありません。すべて従だけです。

藤田嗣治絵画複製事件

kida.biz

昭和60年当時の高裁判決であり、現在の基準とは違うとは思いますが、判断材料としては面白いので参考にしてください。

実のこの裁判、現代のまとめサイト問題と非常に似通った構図があります。それは

  1. 絵画を直接貼り付けた内容の論文を載せた本を発行した
  2. 作者は本の出版により、印税収入を得た
  3. 画家側は転載について拒否する姿勢を貫いていたにもかかわらず、無視された

この点はまとめサイト問題と非常に似ていることがわかります。

  1. まとめサイトはクリエイターの絵や写真、文章の断片を無断転載している
  2. まとめサイトはパクリコンテンツの作成で広告収入を得ている
  3. クリエイターは無断転載について抗議したにもかかわらず無視された

この著作権侵害訴訟の抜粋をここに紹介したいと思います。

4 控訴人は、本件絵画のうち、別紙第一目録一ないし八記載の絵画を撮影したフイルム並びに本件絵画全部の印刷用原版を所有している。 5 控訴人は、著作権侵害になることを知りながら、ないしは少なくとも過失により知らないで本件絵画を複製して掲載した本件書籍を一部の定価金四八〇〇円で合計一万八九七三部発行し、内一万七五二五部販売した。  被控訴人は、控訴人による本件絵画の右複製により、その通常使用料に相当する金額の損害を被つた (著作権法第一一四条第二項)。右通常使用料に相当する金額は、【A】の作品「眠れる美女」を週刊新潮に掲載する著作物使用料として金二〇万円が支払われていることに鑑みても、本件絵画一点につき、金二〇万円を下らないから、右損害額は金二四〇万円を超える。 6 被控訴人は、本件絵画を複製することを許諾する意思を全く有しておらず、このことは控訴人も熟知していた。しかるに、控訴人は、この被控訴人の明確な意思をあえて無視して、本件絵画を複製し、本件書籍に掲載したもので、被控訴人はこれにより感情利益を著しく傷つけられた。  被控訴人が右感情利益の侵害によつて被つた無形の損害は、被控訴人が本件訴訟の提起及び維持、本人としての出廷並びに弁護士費用を含む訴訟諸費用の出費等を余儀なくされていることをあわせ考えると、金一〇〇万円を下らない。 7 よつて、被控訴人は、控訴人に対し、 (一) 複製権侵害行為である本件絵画の複製行為並びに複製権侵害行為によつて作成された物である本件書籍の頒布行為の各停止及び予防の請求として、本件絵画の複製並びに本件書籍の頒布の差止め、 (二) もつぱら本件絵画の複製行為に供された器具である本件絵画を撮影したフイルム (但し、当審において請求を減縮した別紙第一目録九ないし一二記載の絵画に関するものを除く。)及び本件絵画の印刷用原版並びに複製権侵害行為を組成し、かつ、該複製権侵害行為によつて作成された物である本件書籍中の本件絵画の複製物を掲載した部分の廃棄、

注目すべきなのは以下の箇所です。

控訴人による本件絵画の右複製により、その通常使用料に相当する金額の損害を被つた

これも重要な論点です。まとめサイトはパクリで構成されたコンテンツで広告収入を得ているのです。一切の収益がクリエイターに入りませんし、本来、サイトのアクセスによって受け取るであろう広告その他の利益も奪っているのですから

絵画等の美術著作物において、鑑賞性がきわめて重要なことは、その性質上当然であり、このことはその複製物についても同様であるが、それ故にこそ、鑑賞性のある態様で論文等の言語著作物に絵画等の美術著作物の複製物を引用することが当然許容されるとすることは、その美術著作物についての著作権保護を危くするものであることが考慮されなければならない。しかも、絵画等の美術著作物であつても、これを被引用著作物として収録する場合一部引用その他の方法によつて鑑賞性を備えていない態様のものにすることは困難とはいえないから、鑑賞性を問題にすると美術著作物の引用は不可能となるということもできない。それ故、控訴人の前記主張は採用できない。

つまり、引用されているコンテンツが単独で価値を生むのであれば、引用ではなくパクリであるということになることでしょうか?写真家が取るような写真って観賞価値が高いですよね。

以上を要するに、本件絵画の複製物は【C】論文に対する理解を補足し、同論文の参考資料として、それを介して同論文の記述を把握しうるよう構成されている側面が存するけれども、本件絵画の複製物はそのような付従的性質のものであるに止まらず、それ自体鑑賞性を有する図版として、独立性を有するものというべきであるから、本件書籍への本件絵画の複製物の掲載は、著作権法第三二条第一項の規定する要件を具備する引用とは認めることができない。

これも重要な論点です。コンテンツ単独で観賞価値があるのであれば、たとえ、本文の引用に正当性があっても、引用にあたるとの解釈がなされています。もちろん、この手の法律の条文の解釈は慎重であるべきなのですが、写真家という職業が成り立ち、写真展という形で、写真が芸術として扱われているという現実があるのですから、写真もそれ自体で観賞性を有すると解釈することが可能でしょう。

なぜ検索エンジンやSNSのリンク機能は許されるのか?

インターネット上における著作権法の扱いを厄介にさせるのは、検索エンジンやSNSのリンク機能が著作権法で合法な「引用の範囲」であるか?ということです。実際、検索エンジンの検索画面にはオリジナルの要素はほぼ存在しないため、「引用」であるとは言えない状況でした。一時はこれによって、国産検索エンジンの開発が滞るなどの悪影響もありました。

この観点から著作権法が改正されました。つまり、以下の条文が追加されたのです。

著作権法

第四十七条の六  公衆からの求めに応じ、送信可能化された情報に係る送信元識別符号(自動公衆送信の送信元を識別するための文字、番号、記号その他の符号をいう。以下この条において同じ。)を検索し、及びその結果を提供することを業として行う者(当該事業の一部を行う者を含み、送信可能化された情報の収集、整理及び提供を政令で定める基準に従つて行う者に限る。)は、当該検索及びその結果の提供を行うために必要と認められる限度において、送信可能化された著作物(当該著作物に係る自動公衆送信について受信者を識別するための情報の入力を求めることその他の受信を制限するための手段が講じられている場合にあつては、当該自動公衆送信の受信について当該手段を講じた者の承諾を得たものに限る。)について、記録媒体への記録又は翻案(これにより創作した二次的著作物の記録を含む。)を行い、及び公衆からの求めに応じ、当該求めに関する送信可能化された情報に係る送信元識別符号の提供と併せて、当該記録媒体に記録された当該著作物の複製物(当該著作物に係る当該二次的著作物の複製物を含む。以下この条において「検索結果提供用記録」という。)のうち当該送信元識別符号に係るものを用いて自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うことができる。ただし、当該検索結果提供用記録に係る著作物に係る送信可能化が著作権を侵害するものであること(国外で行われた送信可能化にあつては、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものであること)を知つたときは、その後は、当該検索結果提供用記録を用いた自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行つてはならない。

この条文の解釈は難しいと思いますが、とりあえず、Googleを始めとする検索エンジンの仕組みは正式に合法とされたのです。

そもそも、検索エンジンには利用者にとっても、クリエイターにとっても利益をもたらす存在です。検索キーワードに関連した内容のページを一覧にして比較できることは有用ですし、実際にページに移動しないと詳しい内容がわからないため、クリエイターは自分の作ったコンテンツをユーザーに見てもらえることにもなります。そこから、広告収入を得たり、仕事の受注といった導線を引くことも可能でしょう。

TwitterやFacebookのようなSNSのリンク機能も同様です。Twitterのリンクでは、記事のサムネイルと文章の最初の一部分だけが表示され、実際にページに移動しないと、コンテンツの内容はわからないようになっています。

つまり、どちらの場合でもコンテンツの作成者にトラフィックが流れる仕組みになっているのです。

これは著作権法第1条に定められている法律の趣旨にも則ったものです。

第一条  この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。

一方で、キュレーションメディアの場合はどうでしょうか?実際にまとめサイトのページをみてもらえればわかりますが、引用だけでコンテンツが成立しているのがわかります。

引用だけのページ

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これでユーザーがわざわざ引用元のページを訪れると思うのでしょうか?コンテンツがすべて引用で完結しており、リンク先のサイトを訪れようとは思わないはずです。

また、著作権法に定める「引用」の範囲ではなく、主と従の関係が成立しておらず、単なるパクリとしか言いようがありませんね。

キュレーションメディア・まとめの問題点

キュレーションサイト・まとめサイトの問題点は元記事に行かなくても、その内容が分かってしまうことであり、これは明らかにクリエイターの権利を侵害しています。当然著作権法で認められている引用の条件である主と従の関係も満たしていません。つまり、まとめ・キュレーションとは、明白な著作権侵害であるパクリ行為を正当化するための言葉遊びに過ぎないのです。