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UTALI

書き溜めておいた技術記事や旅行記のバックアップです。

freee vs マネーフォワード裁判に見るソフトウェア特許の危険性

クラウド会計サービスを展開するフリー(freee)社が、後発で同様のサービスを展開するマネーフォワードに対して特許権侵害の訴訟を起こしたようだ。

さて、この特許の内容について、あくまで筆者個人の意見を述べさせていただくと、新規性は見られず、特許権自体が無効である可能性が高い。というのも、この手の、文章に対して形態素処理を行い、文字数をカウントすることで文章分類を行うという手法を、単に会計分野に応用したものに過ぎないからである。

詳しい話は避けるが国内ではすでにスマートニュースなどが利用していた手法とほとんど変わらないと思われる。

www.slideshare.net

そして公平な判断のために、類似の判例を見てみよう。これはエムエフピー マネジメントリミテッド (事業内容について検索しても一切情報がなく、おそらくパテント・トロールの一種だと思われる)が「電子ショッピングモールシステム」(特許第4598070号) を理由とした特許権侵害によって、EC大手の楽天に対して5億円の損害賠償請求を行ったものだ。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/271/086271_hanrei.pdf

「電子ショッピングモールシステム」(特許第4598070号)について実際に検索してもらえれば、わかるが、2005年段階での特許として、このような、非常に単純な思いつきに対して、特許権が付与されたこと自体が驚きである。そして当然であるが、この訴訟は棄却され、特許権自体も否定されている。その内容を見てみよう。

インターネットショップにおいてデータベースを使用することは 本件特許の優先日前の技術常識であるとともに周知技術であったこ と 本件特許の優先日(平成17年4月14日)前に刊行されたイ ンターネットショップ関係の書籍等(乙66ないし68)には, インターネットショップにおいて商品情報を保存する「データ ベース」を使用すること,「データベース」には2次元の表として 表現される「テーブル」が存在することが記載されている。

周知技術

また,本件特許の優先日前に発行された公開特許公報(乙69 ないし72)においても,インターネットショップ等に係る発明 について,商品データベースが明示され,そこに「商品名」,「属 性」,「商品分類」(本件各訂正発明の「カテゴリ」に相当)等が保 存されることやデータベースが「テーブル」の形式とされること などが記載されている。

このような文献等の記載からすれば,インターネットショップ において「商品情報」や「カテゴリ」を保存する「データベース」 を使用することや「データベース」が「商品」と「カテゴリ」と を対応させて保存する「テーブル」から構成されることは,本件 特許の優先日前の技術常識であるとともに周知技術であったもの と認められる。

相違点1に係る本件各訂正発明の構成は容易想到であること 仮に,相違点1に係る本件各訂正発明の構成が乙16文献に実質 的に記載されているとはいえないとしても,上記(b)のとおり相違点 1に係る本件各訂正発明の構成は,本件特許の優先日当時における 技術常識であるとともに周知技術であるから,当業者が容易に想到し得るものであることは疑いがない

進歩性・新規性の欠如

本件各訂正発明は,乙6・7画面に示された発明との関 係において,新規性を欠き,又は,進歩性を欠く。

本件各訂正発明は,本件特許の優先日前に,当業者が乙1 6発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものと認めら れるから,本件各訂正発明に係る特許には,進歩性欠如(特許法29条2項 違反)の無効理由がある。

しかし、そもそもなぜこのような極めて新規性に乏しい特許が拒絶されることもなく、承認されてしまったのであろうか?

それはおそらく、特許庁における圧倒的な審査リソースの不足であると言えるだろう。

というのも特許庁には1月あたり、2万から3万件もの特許申請がなされ、厳密な特許審査が不可能なほどの機能不全に陥っていると考えられるからである。

それには、安易に特許拒絶を行うと企業から特許庁が提訴されるリスクがあり、これを避けるために、特許審査が緩くなっているという事実がありそうだ。

特許庁の資料より

https://www.jpo.go.jp/shiryou/toukei/pdf/syutugan_toukei_sokuho/201609_sokuho.pdf

非常に面白い言い回しであるが、これを「特許申請のDDoS攻撃」と呼んでいる人がいた。かなり的を得ていると思う。

それでは、なぜ殆ど勝訴の見込みがないにもかかわらず。freee社は、マネーフォワード社を提訴したのだろうか?それは、マネーフォワード社を特許権侵害で訴えることで、同社が知的財産を軽視する悪徳企業であるとする印象を与え、信用を毀損することを目的とした一種の恫喝訴訟である可能性が高い。

ソフトウェア特許への疑問

そもそもソフトウェアに特許権を認めること自体を制限すべきであるとする意見も根強い

jp.techcrunch.com

調査者の一人であるPam Samuelsonによれば、彼女がこの調査から得た結論は、ソフトウェアのパテントはないほうがよい、というものだ。ソフトウェアのパテントから大きな利益を得ているのは、特許関係の弁護士とパテントトロルであり、起業家たちではない。

また

しかし当時の彼らに考え及ばなかったのは、オンラインのショッピングカートをクリックすることやオンラインのディスカッションの方法をAmazon.comが特許にしたり、あるいはMicrosoftがダブルクリックするアプリケーションをシングルクリックで起動する方法を特許にすることだ。